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WWNニュース 64号 企業インタビューから見えてきたもの

企業インタビューから見えてきたもの

石田 絹子

WWNは 昨年末からこの6月にかけて、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークの協力を得て、国連グローバル・コンパクト署名企業(注)とその他の大企業を含む25社を訪問し、女性の活用施策についてヒヤリングをしました。途中、東日本大震災のため一時中断しましたが、5月連休あけから再開しました。どの企業も非常に快く対応していただきました。

【ヒヤリング項目】

1、 男女別採用状況
2、コース別制度
3、キャリアアップに関する教育・研修
4、管理職への登用状況
5、ポジティブ・アクションの進捗状況
6、育児休業制度の実態

≪≪≪ 企業訪問で私たちが把握した実態 ≫≫≫

その中から私たちが把握した実態は次のとおりです。WWNの企業ヒヤリング調査で、この5年〜10年間に企業における女性登用の施策がかなり変化した事が判りました。その特徴は、経営トップの強いリーダーシップと決断などで、女性の登用、施策が進んでいる所が見受けられます。女性課長10%以上の会社が3社、しかも既婚者は30%〜70%、子どもあり10%〜43%、女性部長は0.3%〜8.6%、既婚者は平均50%、子どもあり30%と、管理職にワーキング・マザーが増えるなど、目を見張る女性の活躍です。また、育児休業の取得率が拡大し、「出産で退職する人がいなくなった」と多くの企業で、離職率の低下が見られます。第3次男女共同参画基本計画の実施など、今後の5年間の変化が楽しみです。

◆増える「名ばかりの総合職」
今回、「総合職またはエリア総合職」、「ナショナルコースまたはエリアコース」、「総合系グローバル職または総合系エリア職」、「全国型または地域型」、「総合職またはビジネスサポートスタッフ」というように従前の一般職、事務職は消え、「名ばかりの総合職」というのが増えていました。企業の説明では、「給与テーブルは同じで、昇給のスピードに差があり、グローバル職は
エリア職より速く、転勤の有無があるだけ」とのことでした。もしも、転勤をしないコースに女性が70%以上を占め、また、一方のコースが、賃金が低く、昇進できない分野であり、女性のみ配置されていれば、間接差別にあたります。厚生労働省によると、2008年度の総合職女性比率は6%となっていますが、今後、調査されるときは賃金、昇進、昇格にまで踏み込んだ実態を正確に把握されることを願います。

◆少なすぎる女性管理職比率
第3次男女共同参画基本計画では、女性管理職比率は平成21年度で、6.5%と記載しています。私たちのヒヤリングでは、課長職に10%以上の管理職女性が登用されている優れた企業が3社ありました。しかし、殆んどの企業は、3~5%に留まっています。第3次男女共同参画基本計画では平成27年までに雇用の分野で、10%にすると記載されていますが、5年後に10%という目標では低すぎるのではないでしょうか。
「2020年30%」をあらゆる分野において目標として下さい。2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標を掲げています。雇用の分野でもこの目標を守っていただきたい。

◆女性役員の割合が遅れている
意思決定の場に女性の割合を高めることの指標に、企業の役員に占める女性の割合がありますが、この分野は特に遅れています。世界に事業展開をしている企業25社の中で、女性の執行役員がいる企業は5社で、生え抜きの執行役員は、まだまだ少ないという実態です。ヒヤリングの中で、「女性役員誕生はいつ頃、実現しますか?」との質問に「まだ、そこまで考えられない」と戸惑われた企業もありました。

◆育児休業でキャリアリセット?
どの企業でも、ワークライフ・バランスの取組みが進んでいて、育児休業制度と子育て期間中の時間短縮がかなりの浸透ぶりでした。離職率減少につながって勤続年数も長くなり、結婚・出産で辞める人はいないと言う企業もありました。
しかし、WWNが行なった働く女性のインタビューでは、育児休業の期間が勤続年数にカウントされない、また、その間は評価されないので昇格が遅れるなど、育休はキャリアをリセットする、あるいはポストオフになることなどが分かり、子どもも欲しい、管理職にもなりたいと願う女性の大きな悩みとなっています。
このインタビュー結果を受けて、企業訪問の時に育児休業取得による評価の影響の有無を質問すると、「影響する」とはっきり回答した企業は1社だけで、多くの企業は「影響しない」と回答がありました。

◆もっと保育所を
「女性を活用する企業」として表彰された中小企業
では、折角キャリアを積んだ女性が、保育所がないことで退職せざるをえないことに忸怩たる思いを持っています。女性社長から、「子ども手当より、地域にいつでも入所できる保育所を作ってほしい」という切実な訴えを聞きました。

◆平等はビジネスになる
*ヒヤリングの中で、りそな銀行やダイキン工業など、コース別制度をなくして女性の活性化に成功している企業もありました。また、シャープやリコーなど、コース別制度をとっていない企業で、生え抜きの執行役員の誕生など、女性の活躍は目覚ましく、女性活用によって女性のモチベーションがアップし、経営発展の原動力になっています。
*女性活用政策の推進力は、経営トップが理念を持ち、トップマネジメントによって女性の管理職登用が進んでいることがわかりました。(旧)ユニフェムと国連グローバル・コンパクトが協力して、「ジェンダー平等と女性のエンパワメントを促す企業対策がビジネスになる」と提唱。政府は女性差別撤廃委員会の最終見解、フォローアップ項目に関し、雇用の分野で女性登用を促進する国として強いメッセージを発して欲しいものす。

——-注) グローバル・コンパクト(GC)とは———

GCは1999年、国連のアナン事務総長の提唱でスタートした。各企業が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取組みです。国連グローバル・コンパクト(GC)署名企業は、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止に関わるCSRの基本原則10項目に賛同する企業トップ自らのコミットメントのもとに、その実現に向けて努力を継続している。

◆◇◆◇ 国連グローバル・コンパクトの10原則 ◆◇◆◇

<人権>
原則1:人権擁護の支持と尊重
原則2:人権侵害への非加担
<労働基準>
原則3:組合結成と団体交渉権の実効化
原則4:強制労働の排除
原則5:児童労働の実効的な排除
原則6:雇用と職業の差別撤廃
<環境>
原則7:環境問題の予防的アプローチ
原則8:環境に対する責任のイニシアティブ
原則9:環境にやさしい技術の開発と普及
<腐敗防止>
原則10:強要・賄賂等の腐敗防止の取組み

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