WWN イベント

WWN ニュースレター 2009年8月27日発行 ①

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NY 国連・女性差別撤廃委員会

日本政府第6次レポート審議会にて

~ミラクルとともにWWN大活躍!~

越堂静子

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   「今年は、ニューヨークへ行こう!」と、WWNはかねてから呼びかけていた。

いよいよ本番の7月、WWNから兼松原告、住友メーカーおよび岡谷鋼機元原告らを含め、大阪、東京、名古屋、福岡、徳島から総勢23名の働く女性たちがCEDAW会議へ参加した。日本政府レポート審議会がニューヨーク国連にて開催されたのは、住友電工裁判を勝利和解に導いた、2003年以来の6年ぶりである。

今回のWWNの主たるミッションは、①均等法・指針の雇用管理区分のカテゴリーの削除と、②兼松裁判をCEDAWに訴え、最高裁から国際基準を遵守した判決を求めることである。原告たちはこの雇用管理区分で生み出されたコース別で、14年間の裁判を余儀なくされた。

 

< CEDAWでなにが・・・>

 

今回は、各分野で活躍するNGOから情報を入手した委員たちから、具体的で鋭い質問が政府に向けられた。圧巻は、パッテン委員が、「差別の定義が十分でない。国内法に入っていない」「間接差別の3つの限定は条約から離れた基準」「雇用の分野のみでなく、いかなる分野においても直接・間接差別を禁止せねばならない」と指摘したことである。

さらに、WWNが提案した、男女平等を阻害する「雇用管理区分」にもしっかりと焦点があてられ、「このカテゴリーの削除」が要求された。「兼松、住友メーカー」の名前が挙げられた時は実際驚いた。「これらの裁判が14年もかかった。国内法に同一価値労働同一賃金が含まれていればもっと解決が早かったのではないか」と、ILO報告を生かしたパッテン委員の質問であった。この瞬間、「今までの苦労が実った!」と感無量であった。

シモノビッチ委員は、「世論が変わるのを待つのですか?ほんの短くても結構です、具体的な成果を説明してください」と迫ります。

しかし、政府側は紋きり型回答に終始し、ミスマッチな回答も見られた。世界で最大のNGOであるIWRAW−APの担当者は「Terrible」と肩をすくめ、私は「Shameful」と首をすくめた。

CEDAW委員が、日本の国のために問題提議をしてくれているのに、打打発止で、日本の未来をデイスカッションする器のないわが政府。政府と裁判官を教育するために、CEDAWからパッテン委員を送ってもらいたいと思った。

 

 

<CEDAWのミラクルたち>

 

今回のCEDAW会議では、「史上初めて」という出来事が「5つ」もあった。まず一つ目は、WWNをふくめ45団体を結集したJNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)から、84名の参加者があったこと。これは史上最高記録である。二つ目は、TVカメラがはじめてCEDAW会議の模様を放映したこと。三つ目は、政府代表として初めて国会議員が出席したこと。四つ目は、国連プレスが現場からCEDAW会議の模様を記事配信したこと。そして、五つ目は、英訳をしない政府に代わって、WWNが英訳した均等法・指針を、史上初めてCEDAW委員たちが入手したことである。

さらに、ここに2つの「ミラクル」が加わった。まず、なんといってもパッテン委員のミラクル旋風である。

CEDAW会議直前の6月に、WWNがパッテン委員を日本へ招待できたこと(皆様のフライト基金ご協力に感謝です!)。その結果、日本の雇用問題を熟知したパッテン委員は、WWNの提案のすべてを咀嚼し鋭い質問で政府に迫ったことである。2つ目も超ミラクル。NHKの記者との20年ぶりのご縁である。

この、7つの史上初&ミラクルを目にされただけでも、読者の皆様はワクワクしてくることであろう。現地でのわれわれは毎日めまぐるしく思考し行動した。そのもたらした変化や成果に、胸おどる瞬間と日々を経験する事となった。

 

<CEDAWのしくみ>

 

これまでは、23人のCEDAW委員全員によって、午前、午後に一回づつ政府への質問をおこなったが、数年前から仕組みが変わった。審議のスピード化を図るため23人のCEDAW委員を2組のチエンバーにわけ、一回の審議期間に、8ケ国を同時進行して審議することになった。林陽子委員はチエンバーAを担当。日本はチエンバーBで7月23日に、11人の委員によって日本政府審議会が終日行われた。

 

また、これまでの「勧告」は、「総括所見」という呼び方にかわり、「最終見解のフォローアップ」というものが加わる。これは、メリハリをつけて勧告の中の特定の項目については2年以内に実施せよというもの。

最近の例では、ドイツで「賃金問題」がフォローアップ項目に取り上げられている。今回の、11人の委員による質問の仕方は非常に機能的で効率的であった。多岐にわたる内容を委員の間で担当し、角度をかえ質問を行う。最後に、フォローアップ質問で、政府への追加および確認質問を、お互いの委員の残された質問もカバーしあいながら、締めの質問を行ったのは見事であった。

 

WWNのミッション> 

 

今回のCEDAW会議にむけてのWWNの提案は下記の4点であるが、前述したように、特に均等法・指針の「雇用管理区分」というカテゴリーの削除に焦点をしぼって、ロビイング活動を行った。結果的には、この4点はすべて委員によって取り上げられることとなった。・・・・これも奇跡。

 

(WWN・男女平等への主な4提案)

1.男女雇用機会均等法の指針の「雇用管理区分」というカテゴリーの削除

2.間接差別禁止を国内法に明記すること

3.男女同一価値労働同一報酬原則を規定するため法改正の措置を取るよう求める

4.選択議定書の早期批准

 

CEDAW委員に、これらの内容を理解してもらうため、私たちは、「雇用問題」特別ファイルを作成した。男女平等の4提案と、法的エビデンスを綴ったものである。WWNのAlternative reportを表紙にして、ブルー(均等法)、ピンク(指針)、薄いブルー(ILO・2008年報告)イエロー(CEDAW・2003年勧告)など色とりどりのタグをつけて配布。2003年にCEDAWから「指針」の改正が勧告されたにもかかわらず、政府は

「英訳していないから、この指針ではない」と逃げた。

今回は、そうならないように、いまだに英訳しない政府に代わって指針の英訳を委員たちに配布した。

 

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==   CEDAWへのいざない   ==

 

7月20日:CEDAW非公式ブリーフイング

15:00 ~ 16:30

 

23日の本会議を前にして、CEDAW委員会主催の非公式ブリーフイングが開催された。
この日は、審議国8ケ国の合同会議である。チエンバーA(アルゼンチン、ブータン、ラオス、スペイン)、チエンバーB(アゼルバイジャン、デンマーク、日本、スイス)の各国のNGO代表が、23人のCEDAW委員全員にむけてスピーチした。各国NGOの発言時間は、たったの10分間である。日本からJNNCの大谷弁護士がスピーチ。そのスピーチにWWNの原稿が含まれ、兼松裁判にふれている。スピーチがWWNの段落になると、兼松原告の逆井さんと小関さんが、大谷弁護士の後ろに立つ。「兼松の賃金差別ノー」のバナーをもって。これは、2003年、住友メーカー原告の場面の再現であり、兼松原告の最高裁勝利を願っての行動であった。
 NGOからのプレゼンテーションのあと委員たちから質問である。パッテン委員から、「均等法・指針の雇用管理区分のインパクト、特にコース別制度における女性差別の実態は?」という質問があった。「そら、きた!」と、私は回答を用意しはじめた。

 

(ショップ・シリングさんの訃報)

ところが、急に林弘子先生からメモが回ってきた。そこには、ショップ・シリングさんの訃報が・・。一瞬、信じられなかった。奇しくも、この会場は、2003年の日本審議会のおり、ショップ・シリングさんが政府に質問をした所。

「低い賃金、昇進しない分野にのみ女性が集中するコース別は間接差別だ」と彼女の凛とした声と姿が鮮明に浮かんできた。あふれる涙々・・・であった。

 

7月22日:NGOランチタイムブリーフイング

13:00 ~ 15:00

 

 

 

会場に入場する参加者84名の姿をTVカメラが迎える。本会議を前に、22日は、日本のNGOであるJNNCが主催し、CEDAW委員を招いてのランチタイム・ミーテイングが開催された。NGOが委員に訴え、委員からの質問を受ける。17団体が2分間づつ、選択議定書批准、教育、農村、マイノリテイ女性、婚外子、雇用などの課題を訴えた。WWNは雇用の問題。通訳の岡田仁子さんが、「兼松、住友メーカー、岡谷鋼機、建設会社など働く女性23名が参加しました」と流暢な英語でスピーチを開始。そのときはWWN一同Stand up、そして一礼した。  

岡田さんは、兼松裁判が14年もかっていること。指針・「雇用管理区分」のカテゴリーは、間接差別のコース別制度を容認、このカテゴリーの削除を、フォローアップ項目に取り上げてほしいと訴えた。

このランチタイムでも、中国選出のZou委員から、「雇用管理区分と間接差別のことをもう少し詳しく説明を」という質問があった。20日の非公式ブリーフイングでの回答が時間切れであったので、JNNCの配慮により、優先的に回答権を均等待遇アクション21とWWNがいただく。やっと、越堂の出番である。

「一昨日のパッテン委員と今日のZou委員の質問にお答えします。指針・雇用管理区分のカテゴリーは、民間企業に働く女性の平等を阻害します。委員の皆さんに配布したホルダーのピンクのタグのページには、雇用管理区分の定義が書かれています」と原稿を読み上げた。・・・ここから、私は原稿を離れ、大阪弁Englishで話した。「この指針は、均等法制定以降、英訳されたことがありません。今回、この指針はWWNが英訳しました」「このフォルダーには、均等法、指針、ILO報告、2003年のCEDAW勧告などすべてをセットしている。何故、民間企業で平等が進まないのか、このフォルダーで全て分かります」と、フォルダーを上に掲げて力説した。途中で、議長から時間を知らせるパットがたたかれ、「兼松裁判のことを言わなくちゃ」と、あわてたため原稿の違う行を読んでしまったりするなど、最後は支離滅裂状態になったのが失敗であった。「でも、すごい迫力で訴えたよ」と、WWNのメンバーのやさしいフォローにホロリ!

 

7月23日:日本政府第6次レポート審議会

10:00~17:30

 

南野議員を日本代表に、内閣府、外務省、厚生労働省、法務省、など各省庁から、若手ばかり17名が参加。史上初のTVカメラが回るなか委員たちの鋭い質問。一方、政府から縦割り行政による紋切り型の回答。委員たちの席から外側の椅子には、ぎっしりとNGOの参加者が座っている。政府のあきれた回答に、NGO側から、時たま、「ふ・・」とか「エーッ」という冷笑や、ざわめきが起こる。それが、どっとひとつの波状になって、前の政府代表たちに届き、非常なプレッシャーになっていたと、あるマスコミ関係の方から聞いた。

 

<パッテン委員のミラクル大旋風が・・>

 

パッテン委員は、条約の第1条、「差別の定義の明記」また11条の雇用に関して胸のすくような鋭い質問を行った。

 

●前回に勧告されたのに差別の定義が国内法に入っていない。働く女性が1700万人、そのうち70%が非正規なのは間接差別、政府はどうしょうと思っているのか。

 

●コース別の雇用管理区分、均等法の指針は、女性に対する間接差別。雇用管理区分は、男女の差別禁止をそれぞれの雇用管理区分に入れ、他のカテゴリーとの比較ができなくなっている。これについては政府も認識している、ILOからも同様の要請がでている。ILOでよく知られたNGOであるWWNは、低い賃金、昇進の機会がない分野に女性が集中していることを懸念。均等法の5条、6条は男女差別してはいけないという立派なもの。付随の指針・雇用管理区分の削除をどう考えるか。

同一価値労働同一賃金(ILO100号条約)を国内法に入れる考えはあるか?
兼松、住友メーカーなど14年間も裁判がかかる。国内法に同一価値労働同一賃金が含まれていれば、もっと解決が早かった。立法的枠組み必要。賃金格差縮小するために、法的枠組みが必要ではないか?

<ここで、越堂は、どうしてもパッテンさんに追加の質問をしてもらいたく、メモを持って行った。このような事が出来るとは夢にも思わなかったのだが・・・。政府の回答を聞いて彼女も同じ思いだったらしく、総合職に占める女性の割合5.1%の表を手にしていた。この阿吽の呼吸に感激!>

 

●均等法5条と6条で、性において差別を禁止、パーフェクトな法律だ。しかし、指針は、法律を希釈している。ひとつの雇用管理区分の中で、男性はキャリアトラックへ。女性はマイナーな事務職。厚生労働省の調査にある、総合職に占める女性の割り合が5.1%というのはどう思うか? 指針・雇用管理区分によって、コース別制度で女性を差別。これは間接差別になる。

<8月中旬には、総括所見とフォローアップ項目が国連のHPに出される。今度は、均等法などの改定をめざし、省庁交渉と国会へのロビイング活動となる。>

 

7月23日: ランチタイム国連前にてビラくばり

 

23日の本会議のランチタイムに、WWNは国連前で、ビラ配りをした。「Dear CEDAW」とよびかけ「日本の賃金格差の実態」を掲載したビラである。

4.5mの長さのパープルカラーのバナーを背にした私たちに、なんと、観光客が喜んでカメラをむける。見ると、警察の白い車が国連前にずらりと並んでいた。警官にたずねると、「アンチ・テロリズム」のために待機しているとのこと。この国も縦割り行政だと思い、ビラ配りを続行。私は、警官のことよりも、国連のガードマンがビラ配りを止めにこないかと気になっていた。

NHKのカメラクルーが到着しメンバーたちを撮影しはじめた。道行く人や国連関係者から「サポートするよ」「署名があるなら、何人でも集めてあげる」と暖かい声に、ますます元気になるメンバーたち。越堂は、榎原記者のインタビューに答えて「日本の女性たちは一般職や非正規に処遇されている、女性の能力を無視するのは先進国ではない」と話した。約450枚ものビラを配り終え、TV撮影も無事に終了した。

さあ、バナーの前で、みんなで記念写真を。すると、そのとき、ガードマンが飛んできて、石田さんの労作であるバナーと、ビラを取り上げてしまった。でも、この間、約1時間、前例にないことである。彼らは大目にみてくれていたのだろうと、またミラクルを感じた。

 

<NHK記者とのご縁>

 

NHKの榎原記者とは、越堂が所属する「商社の女性の会」のご縁で、20年ほど前からの知り合いであった。その彼女が、なんと7月初旬に、NHK・アメリカ総局に赴任する。このときから、私はNYミラクルを感じた。さらに、なんということ!NY行きの飛行機の中で、目の前のTV画面にマイクをもつ彼女の姿がアップで飛び込んできた。アメリカで7月13日に行われた「黒人差別撤廃にむけた100年の歩み」で、彼女はオバマ大統領のスピーチを報道していた。NYに到着してすぐ榎原さんに会い、「女性差別撤廃条約

30年のCEDAW会議を報道するのは、あなたをおいてほかにはない」、と彼女に熱く語った。CEDAW・日本政府審議会の模様と、日本の女性たちがどのような問題を抱えているのか、多くの人たちに知ってもらいたかった。

 

その結果、7月24日に昼のニュースでCEDAW会議が日本とアメリカで放映された。このアメリカ版が、8月6日のNHK教育TV、「ニュースで英語」にて取り上げられ、本番の番組は7月29日にNHK衛星1で放映され多くの感想がよせられた。

 

 NHK.ニュース 7月24日 11時39分

〔ニュース内容〕
 男女平等の社会を目指しあらゆる形の差別をなくそうという女性差別撤廃条約をめぐり、国連は23日、日本での取り組みについて審議を行い、政府の対応の遅れを指摘する意見が相次ぎました。女性差別撤廃条約は採択から30年を迎え、その間に日本を含む

186か国が締結し、国連は専門家委員会を設けて各国での取り組みについて審議を行っています。

23日行われた日本についての審議では、日本政府代表団の団長を務める南野元法務大臣が「日本の男女参画が国際的に見て遅れていることは否めません」と認めたうえで、2005年には1.7%だった国家公務員の課長級以上の管理職を来年までに少なくとも5%に引き上げるとする政府の目標などを説明しました。

これに対して、各国の委員からは「民間企業の総合職に就く女性の割合が全体の5%強しかいないという事実は間接的な差別ではないのか」などといった厳しい意見が相次ぎました。今回の審議には、日本から女性団体などのメンバー80人余りもオブザーバーとして招かれ、会場の外でビラを配るなどの活動を行いました。審議のあと、スロベニアのノイバウアー議長は「日本政府は政策の見直しと、さらに有効な対策と努力が必要だ」と述べ、近く日本政府に対して問題点の改善を求める方針を明らかにしました。

 

みなさんからのTV感想

 

画面構成がとてもよかったと思います。

ダボスフォーラムからはじめたところなど、一般の人には説得力があったと思います。

〔注;〕日本の男女平等法は、ジンバブエ92位よりも以下の98位でした。

 

見ました。非常に良かったです。踏み込んだ報道で、遠くから見ていた政府行政官の顔や、CEDAW委員の顔を改めて拝見しました。パッテン委員は、迫力がありました。ベアテさんも応援している感じがしました。これだけNGOが頑張っても、行政の壁の厚いこと。しかし問題提起は、NHKがやってくれました。

 

TV放映、拝見しました。ていねいないい特集報道でした。

 

新聞やテレビでの報道を拝見して、本当に凄い働きかけをされたのだと、改めて感動しました。少しでも良い方向に向かうように、世論を高めていきたいですね。

 

テレビも観たよ!越堂さんのコメントもバッチリ放映されましたね。ヒューヒュー!この意識レベルでは日本は先進国ではないと言い切る越堂さんに私も全く同感です。記者のコメントも良かったです。ニュースの作られ方もいい視点で作ってありみんなの気持ちを代弁してくれてました。本当にミラクルです!お疲れ様でした。私の勤務する会社はグローバル企業を目指してます。依然として女性管理職が少ないなどグローバル企業の名に恥じない組織のありようを目指すよういろいろな角度から働きかけていきたいと思っています。

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