WWNの省庁交渉〜同一価値労働同一賃金の立法化を〜【1】 2008年5月12日
昨年9月、WWNはジュネーブのILO本部を訪問し、男女賃金格差に向けて直接訴えました。私たちのレポートも参考に審議された「ILO条約勧告適用専門委員会」から、日本政府に対し、再度100号条約にそった法改正の措置をとるよう厳しいコメントが出されました。 そのコメントをもとに省庁交渉を計画し、西村ちなみ、福島みずほ、紙智子、各国会議員のご尽力で5月12日に実現しました。交渉相手は、内閣府、厚生労働省、外務省、最高裁判所、法務省。WWNとして、兼松原告とそのサポーターの方々、住友メーカー裁判元原告、岡谷鋼機元原告、森ます美先生など総勢18名が参加しました。最高裁から担当者の出席があったのは感激でした。
各省庁から簡単に回答は出てきませんが、この数年間、WWNが問題にしてきた最高裁・裁判官協議会の
見解である「わが国には、同一労働同一賃金に関して正規、非正規の規定はない」の対象者を確認し、引き続き、厚生労働省にむけて、今回改正されたパート法において、「男女を含む正規・非正規」が同一労働同一賃金の比較対象であり、対象者が拡大した事を新たに確認することができました。
また、厚生労働省は2年かけて「男女賃金格差研究会」を行う、という悠長なことを考えていることが判明。既に第一回目が開催され、なんと、ILOからの勧告であわてて開始した様子でした。内容については、今後監視していく必要があります。
省庁交渉に超党派女性議員が同席されていて、私達の発言と省庁の回答を聞き「今後国会で問題にしていくポイントが見えてきた。ともに追求していきましょう」と言われ、今回の省庁交渉が活きたものとなっていると感じました。
5月12日午後1時から2時間、衆議院会館に於いてILO条約勧告適用専門家委員会の報告にそって、丁々発止の議論が省庁交渉で行われました。WWNの主催、そして財団法人倶進会の助成事業です。その主な部分をピックアップして下記に再現します。
●同一価値労働同一賃金の立法化について
WWN:2007年3月のILO報告は「広範で継続的な男女格差が縮小していない。労基法4条が充分に機能していないのではないか」と指摘しています。この専門家委員会の意見は正しいと思うがいかがでしょうか?
住友メーカー、岡谷鋼機などの賃金差別裁判が10年以上かかったが、労基法4条に同一価値労働同一賃金が明記されていれば判決も違ったし、こんなに年数をかけなくてもすんだという原告たちの意見にどのように回答されますか?
厚労省:労基法4条はILO100号条約の要請を満たしていると考えています。裁判において4条の違反を判断するにあたり4条が同一価値労働同一報酬にそって解釈された例があるので現時点において法改正の必要は無いと考えています。しかしながら男女間格差は依然として大きく、重要な問題であり施策の充実を図っていくつもりです。
WWN:ILOからは労基法4条は同一価値労働同一賃金の要素について言及していないと勧告されています。もし入っているというなら通達を出すとか、周知をはかる方法はいかがでしょうか。
厚労省:裁判例でも出されているので、ILOの要請は満たしていると考えています。
WWN:裁判例はどこのものですか。
厚労省:ILOに出したのは2004年の内山工業で、男女の職務を比較しています。報告後の2008年兼松判決も男女の職務を比較した記述があります。
WWN:内山工業は同一労働です。兼松に関しては同一価値労働同一賃金であるというお墨付きをもらったということならうれしい。95年以降の多くの裁判が非常に長く困難な闘いを余儀なくされました。労基法4条に明記されていれば違っていたはずです。
森ます美:京ガス事件はなぜここに上がってこないのですか?
厚労省:(沈黙)