条約勧告適用専門家委員会100号個別意見
CEACR(条約勧告適用専門家委員会)
:1951年同一報酬条約(100号)に関する個別意見 日本(批准1967年) 2007年3月公表
1. 委員会は2005年9月5日付の日本の政府報告および添付された日本労働組合総連合会(JTUC-RENGO)の意見、ならびにこれらのコメントに対する政府の回答に留意する。
賃金のジェンダー格差の評価
2. 委員会は、2004年賃金構造基本統計調査によると、フルタイム労働者について全体的な賃金のジェンダー格差(所定内給与)が2000年の34.5%、2002年の35.1%に対して2004年には34.3%であったことに留意する。政府報告によると、フルタイム労働者の所定内給与に関するジェンダー格差は1986年の40.3%から2004年の32.4%と減少し続けている。委員会はまた、政府が提供したデータによると、すべての産業においてパートタイムで働く女性は平均してパートタイムの男性よりも長くその職についているが、提供される統計の119の職業分類のうち105において、女性のパートタイム労働者が受け取った時間給は男性パートタイム労働者のそれより低かったことに留意する。JTUC-RENGOはその意見において、賃金格差がまだ高いと考えており、政府は残る格差が国際的に比較した場合まだ大きいと認識していると述べている。委員会は、日本における継続した、大きな賃金のジェンダー格差に関して重大な懸念を表明する。委員会は、政府に、委員会による1998年の一般的意見に述べたようにできる限り男女別、産業および職病分類による正規および非正規労働者に関する詳細な統計情報を引き続き提供するよう要請する。また、政府に賃金のジェンダー格差の展開およびそれに対処するためにとられた措置の影響を検討したいかなる報告や調査についても情報を提供するよう要請する。
立法
3. 委員会は、賃金のジェンダー格差の根底にある要因を取り除くためには実施可能な立法措置が必要であるとするJTUC-RENGOの以前の意見を思い起こす。委員会は政府報告の、2005年9月より労働者、雇用者代表を含む、専門家による諮問審議会が、男女の機会均等の促進強化措置について検討しているということについても留意する。男女雇用機会均等法を改正する2006年の法律第82号がその後制定され、207年4月1日に施行されることに留意する。 委員会は、改正均等法が、配置や責任、ならびに労働者の職務または雇用契約の変更に関して性別に基づく差別を明文で禁止していること(6条)に関心を持って留意する。 委員会は、政府に今後の報告に改正均等法の実施および執行に関する情報を、条約の適用に関する行政または司法判断の例を含めて提供するよう要請する。
4. 委員会はしかし、均等法が報酬水準に影響する事項について差別を禁止するが、同一価値労働同一報酬の原則を考慮して、報酬を決定する直接的または間接差別的な手続きまたは方法を禁止することによる賃金差別自体をカバーしない。以前、委員会が指摘したように、雇用者が賃金に関して女性に対して男性と比べて女性であるという理由で差別的取扱いを行ってはならないとする労働基準法の4条は、同一価値労働同一報酬の要素について言及しないため、条約の原則を十分に反映していない。条約のこの原則の要素は、異なる職務や労働を行っている男性と女性の報酬を、客観的な非差別的職務評価の適切な技術を活用して、その異なる職務の内容評価に基づいて考慮することを要するため、非常に重要である。 政府が再度、労働基準法4条が条約の要件を満たしていると考えると述べていることに対し、継続する大きな賃金のジェンダー格差に照らして、女性が主に、またはすべて行っている仕事の差別的な過小評価により起こる直接または間接的賃金差別に対処する必要があることを委員会は強調する。 この点において、委員会は、事例によって、裁判所は4条の違反があったかどうか判断するにあたり男性と女性によって行われた職務または仕事を比較したことがあるとの政府の指摘に留意する。しかし、ほとんどの事例が昇進または昇格における差別的慣行をめぐるものである。委員会は政府に、同一価値労働同一報酬の文脈のも含めた労働基準法4条の適用に関する裁判判決、特に確定判決の概要を提供し続けることを要請する。継続する大きな賃金のジェンダー格差に鑑み、委員会は政府が、条約の十分な適用を保障するために、男女の同一価値労働同一賃金の原則に立法に移すことを考慮すること、この点に関するいかなる展開をも次回報告に示すことを望む。
間接差別
5. 間接差別に関する以前の意見に関して、委員会は2006年均等法改正が間接差別に対応するよう意図された7条を新たに導入したことに留意する。7条は、厚生労働省に、政令を通して、男女の割合や他の要素を考慮し、実質的に性別に基づく差別になり得ると考えられる措置を特定する権限を付与する。雇用者はそれらの措置が、事業全体の状況から見て、職務または事業の運営に必要、あるいは他の合理的な理由がない限り、それらの措置をとってはならない。以前の意見の第10段落にあげた間接差別の概念に関するガイダンスを想起して、委員会は、7条が当局に様々な状況に適用され得る間接差別の一般的定義を導入するのではなく、当局に限定的な数の間接差別となり得る状況または慣行を特定する権限を付与するという制限的なアプローチをとっていることに留意する。委員会は、政府に、均等法の7条の下で予定される政令が、客観的に職務に関連した正当化なしに相当数の女性が男性と比べて低い水準の賃金しか得ていない状況につながる広範な措置をもカバーするよう確保するためにとった措置を示し、また政令の制定後直ちにその文言を提供するよう要請する。また政府に、パートタイム、有期および契約雇用の文脈、ならびにコース別人事の活用における性別に基づく間接的賃金差別の事例を特定し、是正するためにとられたいかなる措置をも示すよう要請する。
促進措置
6. 以前の意見において、委員会は2003年、政府が、男女の賃金格差撤廃のために賃金および雇用方針を改善するための措置に関する指針を公表したことに留意した。これらの任意の指針は、委員会の以前の伊権威反映された、日本における賃金のジェンダー格差の重要な原因と考えられるいくつかの問題に雇用者が対応するよう促すものである。委員会は、雇用者および労働者団体への情報および資料配布を通して、指針が広範囲に活用されるよう確保する努力をしているという政府の指摘に留意する。政府はまた、賃金格差報告の作成を通して状況をモニターすることによって賃金格差を縮小しようとする雇用者および労働者の取組みを促進しているとも述べている。委員会はさらに、政府の報告にあげられた女性の管理職の割合を拡大するための措置などいくつ化の企業によってとられた積極的措置の例に留意する。指針が取りあげた事項の一つが、賃金の決定に蹴る客観性と透明性を確保することを含む、雇用および賃金制度の改善の必要性であることを想起し、委員会は、同一価値労働同一報酬の原則を実施するためには、客観的で非差別的な職務評価の措置を研究し、開発する必要があるというJTUC-RENGOの立場に留意する。委員会はこの評価を共有する。委員会は、政府に、とられた積極的措置および賃金格差報告に関する情報を含め、上記の指針の促進、適用および賃金のジェンダー格差への影響に関する詳細な情報を提供するよう要請する。特に、委員会は、政府に、透明で非差別的な賃金の決定並びに業務配分および配置を確保するために企業がどのように雇用および賃金制度を改革しているかを示す情報を提供するよう要請する。条約3条が条約を適用する手段として行われた仕事に基づく客観的な職務評価を予定していることを想起し、委員会は、政府に、職務の客観的評価を促進するためにとられた措置を示すよう要請する。
コース別人事制度
7. 委員会は、男女の賃金格差の問題に関する研究会による2002年の報告が、コース別人事制度の活用が、管理職に就く女性の数の低水準につながり、賃金格差の原因となっていることを指摘したことを政府が示したことに留意する。2003年の調査は2000年において総合職にいる女性の割合が3.5%と低く、コース別人事制度をとる企業の23%がそれまでの3年以内に見直していることを示している。委員会は、政府に、そのような制度の活用を減らし、そのジェンダー差別的効果を最低限に押さえるためにとられた措置、および制度がどの程度とられているかに就いて、それぞれのコースにおける男女の配分に関する最新の統計情報を含め、情報を提供し続けるよう要請する。
労働審査
8. 委員会は、2004年に行われた122,793件の審査のうち、8件しか労働基準法4条の違反と認められなかったことに留意する。そのいずれも検察局に付託されるほど重大と見なされていない。委員会は、政府に、4条違反と見なされた件数およびその性質を含め、賃金のジェンダー格差に対して労働基準局が取った措置に関する情報を提供し続けるよう要請する。また、政府に、労働審査官が同一価値労働同一報酬の原則の違反を特定し、発見する方法を示し、同一価値労働同一報酬の原則およびその実施に関して労働審査官に提供される研修に関して示すよう要請する。
政府に、すべての項目を96会期総会に提供し、2007年に詳細な報告を提供するよう要請する。