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WWNニュース №58号 2010.1.25発行 

             

 

 

 

 

 

 

  

(前列右から2番目が 松田さん)                                            

                                       松田安希子

 

 

 

2009年、私は㈱川島織物セルコンを退職し、11月20日に男女賃金差別を理由に総額約1700万円余りの損害賠償請求訴訟を提起しました。差別是正という最低限の法令も守れない会社の「コンプライアンス」とは、口先だけのものだったのか、そしていつまで男女差別是正に背をむけ続けるつもりなのか、もはやこの組織の中で、何を言っても無駄だと思い知らされての退職と提訴でした。

 

 

私の仕事内容

私は、平成2年12月に(株)スペースエイジに入社しました。同社は、内装仕上工事に関する設計・施工等を業務内容とする資本金3000万円、従業員数約15名程度の会社でしたが、その後、平成11年に㈱セルコンテクノスと社名変更し、業務内容に新たにインテリア商品及び内装仕上材の企画・開発・販売が付け加わりました。入社当初は事務の仕事をしていましたが、3~4ヶ月した時点で、営業部長から「営業をやってみないか」と声をかけられ、営業に従事するようになり、退職するまで18年間、営業として頑張ってきました。内装仕上げ工事の営業職の業務内容は、受注活動から始まり、図面積算、見積書の作成・提出などから、現場立ち会い、現場検査などを経て、最後は、苦情処理、集金に至るまで多岐にわたります。時には深夜も現場に立ち会いをしないといけないこともある厳しい仕事ですが、私はこの仕事が好きで、施主の信頼も勝ち取って成果をあげてきました。

男女差別を知るに至った経過

平成11年の社名変更後に、会社の規模も大きくなりましたが、その後会社は、親会社である(株)川島織物セルコンと合併を平成20年10月に予定し、それに向けて、平成19年8月にステージ給の導入、平成20年3月に退職金制度の廃止と確定拠出年金・前払い退職金制度の導入という大きな制度変更がありました。

この制度変更の過程で、私は初めて、自分の賃金に疑問を持つようになりました。ステージ給導入の際に示されたランクⅠ—4は、入社1~2年の男性社員のランクでした。また退職金制度の廃止にあたって示された退職金は勤続17年で、2,468,900円という低額でした。

思い余って、平成20年3月9日、人事部長に説明を求めました。人事部長に、ステージ給のランクがⅠ−4という低いランクであることについて質問すると、「総合職と地域限定に分かれていまして、女性の場合は地域限定職、いわゆる一般事務の方がそうです。だから松田さんの場合、一般事務職のステージがⅠ—4ということです」という答えが返ってきました。

しかし入社後3~4ヶ月は一般事務をしていたものの、その後一貫して営業を担当していたのに、一般職であると言われても納得できません。私は人事部長の説明は、間違っていますと指摘しましたが、人事部長は「間違いじゃないです。そもそもテクノスに女性の営業職はありませんし、女性の営業もいません」と、私の存在をも否定するような説明があり、怒りがこみ上げてきました。とても納得できるものではありませんでした。

また私より勤続年数がずっと短い男性社員の方が、私より退職金が高いことを指摘すると、人事部長は、「それはステージ給が髙いからだと思います。松田さんの上司が評価していますので、上司に聞いてみてください」との説明しかしてくれませんでした。

この上は、社長に訴えるしかないと思い、石田社長に面談を申し入れ、平成20年4月23日に面談をしました。人事部長から「一般事務職」と言われたことを納得できないと社長に言いましたが、社長も「総合職と地域限定職とがあって、総合職の場合は転勤があるので男性社員が総合職、女性の場合は転勤のない地域限定職になっている」と説明し、さらに私が「いくら頑張っても、17年経っても平社員のままで、給与はステージ1—4で入社1~2年目と同じランクというのは、あきらかに差別されているとしか考えられない」と訴えても、社長は「今になってなんでそんな事言うのか理解できない」とか「そんなに会社に対して不満抱えて仕事する必要もないし、さっさと辞めたらすむ話ちがうの」「みんな我慢して頑張っているんや。あんたひとりがそんなわがまま言っても聞ける話じゃない」などと言い、格差是正どころか、なおも差別を温存しようとしているとしか思えませんでした。

その後、社長から人事部長に私のことで話が行ったらしく、5月16日になって、人事部長から呼び出されました。人事部長が「この前の話で何か誤解があったようです」と言い出したので、私が「誤解もなにも17年も営業しているのに、テクノスに女性の営業はいないとか、評価が悪いのは上司の評価がそれだけの評価しかないなど、納得できません」と反論すると、部長は「今後の事を話し合いましょう。これまでのことは、これまでのこととして」と過去の差別を不問に付すような態度をとったので、「先にこれまでの事をきちんと納得できる形にしてもらってからでないと、これからのことについて話し合えません」と答えました。

もう公にするしかないのかと思い悩みましたが、もしかすると、その年の10月に予定されていた(株)川島織物セルコンへの吸収合併で、少しは変わるかも知れないと、かすかな期待もありました。そして会社は、2008年10月に(株)川島織物セルコンに吸収合併されました。しかし合併後もなんら是正されることなく、差別が放置され続けたばかりか、更なる不利益が待ち構えていました。

退職に至る経過

2009年2月になって会社は「特別転進支援制度」という早期退職を迫るリストラ策を発表しました。そしてリストラの対象とする社員とそうでない社員が支店ごとにリストアップされていきました。この支店において行われたリストアップでは、私はリストラの対象にはなっていませんでした。ところが、私が男女差別のクレームで面談を申し入れた(株)セルコンテクノスの石田社長は、その後の吸収合併で、(株)川島織物セルコンの専務になっていて、石田専務がリストラ対象者リストに私が入っていないと知るや、「松田をリストラ対象とすること」を頑なに主張し、私はリストラ対象者とされてしまいました。差別是正を求める私に対し、権力をもっての報復でした。それでも「辞める意思はありません」と言い続ける私に対し、会社は退職勧奨をタテに執拗に退職をせまってきました。退職勧奨は6回に及び、しかも私が辞めるというまでその勧奨は続くと言いました。合併しても何ら変わらず、もはやこの組織の中では何を言っても無駄なんだと思い知らされると同時に、権力の前にあまりにも無力である自分が一人で立ち向かうことの困難さに、退職勧奨を受け入れ退職しました。とうとう最後まで、是正についての会社からの回答は一切ありませんでした。そして「もうこれ以上、何も失うものなどない」と思うに至り、裁判という選択をしました。永年勤めた会社に対しては、きちんと声を受け止め、自ら是正に向けての一歩を踏み出して欲しかった。とても残念に思っています。幸い私の場合、周りのたくさんの方々の励ましもあり、やっとスタートラインに立つことが出来ましたが、この裁判に勝利することで、同じように差別を受け続けている女性達が、差別是正を求めるのはわがままなどではなく、当然の権利であると、勇気をもって立ち上がれるようになって欲しいと思います。

【 代理人 宮地光子弁護士のコメント 】

  会社は、平成19年から始まった人事制度の見直しの中で、初めて「総合職」「地域限定職」という言葉を使ってきましたが、それ以前に、コース別雇用管理が導入されていたわけではありません。しかし男女別雇用管理は、しっかりと行われており、松田さんと、男性との賃金データーを比較すると以下のようなことが明らかになってきました。

①男性であれば支給されている住宅手当、職務手当が、松田さんには支給されていない。

②同じ営業の男性と比較しても、松田さんの外勤手当が低い。

③昇格によってランクが決定される資格給・職能給・ステージ給の決定にあたって、松田さんは、男性に比べて昇格が著しく遅れている。

このような男女別雇用管理を取り繕うために、急遽持ち出したのが、「総合職」「地域限定職」という、にわか仕立てのコース別です。 京ガス賃金差別事件において、会社が男女差別の指摘を受けて、コース別雇用管理を持ち出してきた経過と、とてもよく似ています。 

 

 

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