ペイ・エクイティとは
<仕事の価値を再評価>
ペイ・エクイティ(同一価値労働同一賃金)は仕事が異なっていても、その価値が同一または同等の仕事をおこなっている男性と女性にたいして、性別にかかわらず同じ賃金を支払うことを求める原則です。
歴史的に、男性と女性は違った仕事に従事する傾向があり、女性が伝統的におこなってきた仕事(女性職)は、男性の仕事に比べ、一般に、実際の価値よりも低く評価されてきました。ペイ・エクイティは、性によって分離された女性職の価値を再評価することによって、女性にたいする賃金差別を是正するための戦略です。
<ILO100号条約>
ペイ・エクイティの原則は、1951年には、ILO100号条約(同一価値の労働についての男女労働者にたいする同一報酬に関する条約)として採択され、日本政府も1967年にこの条約を批准しています。
女子差別撤廃条約も、第11条1項d号でこの原則を確認し、さらに、1995年に北京で開催された第4回世界女性会議の「行動綱領」は165項(a)において、各国政府が「同一労働同一賃金又は、同一価値労働同一賃金に対する女性及び男性の権利を保障するための法律を制定し施行すること」を求めています。
<性に中立な職務評価システム>
ペイ・エクイティは、アメリカ合衆国の多くの州の公共部門で、コンパラブル・ワースの呼称の下に1980年代を通じて実施されてきました。
また、カナダのオンタリオ州は、この原則を1987年に「ペイ・エクイティ法」として立法化し、民間企業も含めて使用者にその実行を義務づけています。その意味で、ここで紹介するオンタリオ州はペイ・エクイティの原則を最もラディカルに実践しているところといえます。
ペイ・エクイティを実現するための重要な鍵は、女性の仕事の価値を公正に評価する性に中立な職務評価システムです。
ペイ・エクイティ法は、技能、負担、責任、労働環境の4つのファクターによって職務を評価することを義務づけています。実際に女性職と男性職の価値を評価するのは、使用者・労働組合代表・その仕事に従事する労働者などによって職場のなかにつくられた職務評価委員会であり、使用者=企業側が一方的に評価するのではありません。またここで評価の対象となるのは仕事そのもの価値であって、仕事をする労働者(人)ではありません。
<日本への適用>
日本においては、労働者が従事する職種・職務の内容は、欧米のように明確に規定されていません。したがって職務の価値を評価するためには独自の工夫が必要でしょう。
しかし、ペイ・エクイティは、男女賃金格差を是正する1つの有効な手段です。その理念と方法の日本への適用は、今日の重要な課題となっています。
(「平等へのチャレンジ」日本ペイ・エクイティ研究会より抜粋)