CEDAW

2005年日本政府年次報告


「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第100号)」
(2003年6月1日〜2005年5月31日)

1.質問Iについて
前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。

2.質問IIについて
(1)我が国では、2002年に取りまとめられた男女間の賃金格差に関する研究会報告書を受け、2003年に労使が自主的に男女間賃金格差解消に取り組むための「男女間の賃金格差解消のための賃金管理及び雇用管理改善方策に係るガイドライン」を作成し、以来労使団体等を通じたパンフレットの配布などにより、その周知・啓発に努めているところである。
また、ポジティブ・アクションの積極的な推進や職業と家庭の両立施策の充実に取り組むほか、男女間の賃金格差レポートを作成し、男女間の賃金格差の現状やその変化を継続的にフォローアップし、男女間の賃金格差問題への関心を高めるとともに、その縮小に向けた労使の取組の促進を図っているところである。
さらに、企業における雇用管理の適切な推進に資するため、女性に対する偏見を是正するための教育研修プログラムを開発し、ビデオやチェックリストの形で広く活用を図っているところである。

(2)2004年の専門家委員会の意見について
(ⅰ)パラグラフ2について
厚生労働省「賃金構造基本調査」により、我が国の男女間賃金格差は、男性一般労働者の平均賃金水準を100.0としたときに、女性一般労働者の平均賃金水準は、2000年65.5、2002年66.5、2004年67.6となっている。
下記の内容で、統計情報を提供する。
内容 (1)一般労働者の男女間所定内給与格差の推移(別添1)
(2)性、年齢階級別の平均年齢、勤続年数、所定内実労働時間数、超過実労働時間数、きま給、所定内給与額、年間賞与額、労働者数(別添2)
(3)性、年齢階級、勤続年数階級別の所定内給与額、年間賞与額、労働者数(別添3)
(4)性、年齢階級、職階別の平均年齢、勤続年数、きま給、所定内給与額、年間賞与額、労働者数(別添4)

(ⅱ)パラグラフ3について
我が国では、2003年に労使が自主的に男女間賃金格差解消に取り組むためのガイドラインを作成し、労使団体等を通じたパンフレットの配布などにより、その周知・啓発に努めているところである。あわせて、男女間の賃金格差レポートを作成し、男女間の賃金格差の現状やその変化を継続的にフォローアップし、男女間の賃金格差問題への関心を高めるとともに、その縮小に向けた労使の取組の促進を図っているところである。

(ⅲ)パラグラフ4について
確かに、裁判例では職務内容についての比較を行ったものはあるが、賃金格差を争った裁判の多くは昇進昇格の結果生じた賃金格差が問題となっているところである。そして、我が国では、学識経験者による男女間の賃金格差問題に関する研究会で、職務評価の問題も含め、男女間賃金格差問題について検討を行った。そこでは、我が国においては、採用後の担当職務を決めないで採用し、幅広く職務経験を積ませることにより人材育成を図る慣行が広くみられ、そのような慣行を採用している企業では職務配置も企業の裁量に任す慣行が広く行われており、このような慣行の下では、職務給の前提条件が必ずしも満たされていない。このため、男女間賃金格差縮小には、職務評価手法ではなく、人事評価を含めた賃金制度の運用の面や職務における業務の与え方の積み重ね等の雇用管理面の改善が有効であるとされたところである。
このため、ポジティブ・アクションの推進に加え、労使が自主的に男女間賃金格差解消に取り組むためのガイドラインを作成し、労使団体等を通じたパンフレットの配布などにより、その周知・啓発に努めているところであり、労基法第4条がILO第100号条約の要請を満たしていることから現時点で法令改正は考えていない。
男女同一労働同一賃金の確保については、個別的な監督を実施し、労働基準法第4条に関する違反が認められた場合には、その改善を指導している。
また、我が国においては、2002年11月から学識経験者による男女雇用機会均等政策研究会を開催し、その中で、男女双方に対する差別の禁止及び間接差別の禁止等について検討を行い、昨年6月に報告書を取りまとめたところである。昨年9月からは、この報告書も受け、男女双方に対する差別の禁止及び間接差別の禁止も含め、男女雇用機会均等の更なる推進のための方策について、公労使の三者構成からなる関係審議会において議論を行っているところであり、我が国としては、その結果を踏まえ、適切に対応していく予定である。

(ⅳ)パラグラフ5について
女性の活躍推進協議会は、中央のみならず各都道府県労働局にも設置され、行政と経営者団体が連携してポジティブ・アクションの普及促進を図る仕組みとして、様々な活動を展開している。特に我が国では、男女間賃金格差を発生させている要因として職階の違いによる影響が大きいことから、ポジティブ・アクションの取組の強化は重要である。
同協議会ではこれまで「ポジティブ・アクションのための提言」を取りまとめ、その意義、必要性、効果やポジティブ・アクション推進のためのポイントとして、経営者、人事担当者、女性等それぞれの立場ごとに整理し、フォーラムやセミナー、シンポジウムを開催する等により、提言の普及に努めるとともに、実際にポジティブ・アクションに取り組んでいる企業の具体的な取組内容を冊子にして取りまとめ、どのように取り組めばよいかのヒントを提示してきたところである。また、この他にも、この協議会の提言から実施されることとなった事業として、具体的にポジティブ・アクションに取り組もうとする企業が、実情に応じた目標を立てる際に活用できるよう、同業他社と比較したその企業の女性の活躍状況や取組内容についての診断を受けられるベンチマーク事業があげられる。
実際にポジティブ・アクションに取り組む企業の実例としては、女性の管理職比率の目標値を設定し、その実現のため特別の教育訓練プログラムや計画的人事配置によるキャリア開発を実施したり、メンター制度を導入したり、継続就業が可能となるよう、企業内託児施設を設置したり、子供が病気の時などに保育者を自宅派遣する保育支援を行う等様々な取組がみられている。

(ⅴ)パラグラフ6について
我が国においては、2002年11月から学識経験者による男女雇用機会均等政策研究会を開催し、その中で、間接差別を検討課題の一つとして掲げ、どのようなケースが間接差別となるのかについて検討を行い、昨年6月に報告書を取りまとめたところである。
研究会においては、間接差別について、「外見上は性中立的な基準・慣行等(以下、基準等という。)が、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与え、しかもその基準等が職務と関連性がない等合理性・正当性が認められないもの」と定義している。昨年9月からは、この報告書も受け、間接差別の禁止も含め男女雇用機会均等の更なる推進のための方策について、公労使の三者構成からなる関係審議会において議論を行っているところであり、我が国としては、その結果を踏まえ、適切に対応していく予定である。

(ⅵ)パラグラフ7について
日本政府が現在講じているパートタイム労働者の処遇改善を図る政策については、同一価値の労働についての男女労働者の同一報酬原則の適用を確保することを目的に講じているものではないが、「パートタイム労働法」に基づく「パートタイム労働指針」については、2003年8月に改正を行い、通常の労働者とパートタイム労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を具体的に示したところである。現在、この「パートタイム労働指針」の考え方を広く定着させるために、都道府県労働局雇用均等室において、事業主等に対するセミナー・集団説明会を開催するとともに、パートタイム労働者の雇用管理を行う短時間雇用管理者の選任勧奨を行っている。
また、短時間労働援助センターとして指定された(財)21世紀職業財団において、短時間労働者雇用管理改善等助成金の支給、通常の労働者とパートタイム労働者との均衡を考慮した処遇に取り組む企業へのコンサルタントの派遣など、パートタイム労働者の雇用管理の改善を促進するための事業主に対する援助事業を行っている。
下記の内容で、統計情報を提供する。
内容 (1)性、産業、年齢階級別の平均年齢、勤続年数、実労働日数、1日当たり所定内実労働実数、1時間当たり所定内給与額、年間賞与額、労働者数(別添5)
(2)性、職種別の平均年齢、勤続年数、実労働日数、1日当たり所定内実労働
1時間当たり所定内給与額、年間賞与額、労働者数(別添6)

(ⅶ)パラグラフ8について
コース別雇用管理制度による女性の賃金水準への影響については、学識経験者による「男女間の賃金格差問題に関する研究会」において検討を行ったところであり、2002年11月に公表された同研究会の報告書において、コース別雇用管理が男女間賃金格差を生み出している面もあると指摘されている。これは、コース別雇用管理導入企業の方が、導入していない企業に比べ、女性の管理職の割合が低いことが大きく影響しているのではないかとの考えによるものである。
厚生労働省では、2000年にコース別雇用管理の適切な運用がなされるよう「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」を策定し、これに基づき、必要な指導等を行っているところである。特に、ここ数年は、都道府県労働局による計画的な事業所訪問の対象に一定数の同制度導入企業を加え、その指導等を強化しているところである。
なお、2003年度実施の女性雇用管理基本調査によると、コース別雇用管理制度が「ある」とする企業割合は9.5%である。一方、過去3年間に、コース別雇用管理制度の見直しをした企業割合は23.0%で、コース導入割合が高い5000人以上規模企業では、45.2%が見直しをしており、大規模企業での見直しが進んでいる。見直しの内容は、コース転換の柔軟化、職務内容等に応じたコースの分割または統合などが見られた。
下記の内容で、統計情報を提供する。
内容 (1)コース別雇用管理制度の見直しの有無別企業割合(過去3年間)(別添7)
(2)総合職に占める女性の割合(別添8)

(ⅷ)パラグラフ9について
下記の内容で、統計情報を提供する。
内容 (1)産業別、雇用形態別役員を除く雇用者数(別添9)
(2)職業別、雇用形態別役員を除く雇用者数(別添10)
(3)従業上の地位別男女別従業者数(別添11)

(ⅸ)パラグラフ10について
我が国においては、2002年11月から学識経験者による男女雇用機会均等政策研究会を開催し、その中で、間接差別を検討課題の一つとして掲げ、どのようなケースが間接差別となるのかについて検討を行い、昨年6月に報告書を取りまとめたところである。
研究会においては、間接差別について、「外見上は性中立的な基準・慣行等(以下、基準等という。)が、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与え、しかもその基準等が職務と関連性がない等合理性・正当性が認められないもの」と定義している。
昨年9月からは、この報告書も受け、間接差別の禁止も含め男女雇用機会均等の更なる推進のための方策について、公労使の三者構成からなる関係審議会において議論を行っているところであり、我が国としては、その結果を踏まえ、適切に対応していく予定である。

(ⅹ)パラグラフ11について
我が国では、学識経験者による男女間の賃金格差問題に関する研究会で、職務評価の問題も含め、男女間賃金格差問題について検討を行った経緯がある。そこでは、我が国においては、採用後の担当職務を決めないで採用し、幅広く職務経験を積ませることにより人材育成を図る慣行が広くみられ、そのような慣行を採用している企業では職務配置も企業の裁量に任す慣行が広く行われており、このような慣行の下では、職務給の前提条件が必ずしも満たされていない。このため、男女間賃金格差縮小には、職務評価手法ではなく、人事評価を含めた賃金制度の運用の面や職務における業務の与え方の積み重ね等の雇用管理面の改善が有効であるとしている。
この研究会報告を受け、ポジティブ・アクションの推進に加え、労使が自主的に男女間賃金格差解消に取り組むためのガイドラインを作成し、労使団体等を通じたパンフレットの配布などにより、その周知・啓発に努めているところである。

(ⅹⅰ)パラグラフ12について
労働基準監督官がおこなった定期監督(災害時監督を含む。2004年(122,793件)において、労働基準法第4条(男女同一賃金の原則)に関する違反が認められた件数は、2004年8件であった。
また、同条違反容疑で検察庁に送検した件数は、2004年0件であった。
男女雇用機会均等法に基づく調停の対象に男女間賃金格差それ自体は含まれないが、調停においては配置、昇進等に係る女性に対する差別的取扱いの事案は取り扱っており、男女間賃金格差の解消につながっているものと考えている。

(ⅹⅱ)2003年8月26日付け全医労の意見書について
本件に関しては、2003年の年次報告の「2.(2)(5)パラグラフ5」で述べたとおりである。また、毎年1月下旬から2月中旬に厚生労働本省と全医労本部との間で労使交渉を行っている以外は、前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。

(ⅹⅲ)2004年8月4日付け全医労の意見書について
全医労は、「独立行政法人化にともない、…賃金職員を正職員化するのが当然」と報告しているが、従来の国立病院・療養所の賃金職員は、1日8時間勤務で日々雇用され、年度当初から1年以内の任用期間が定められていた者であり、2003年度末の任用期間の終了をもって当然に雇用関係が終了したものである。
国立病院機構は、2004年4月の独立行政法人の発足に伴い、経営の効率化が求められたことから、組織・運営体制の見直しを行い、常勤職員と短時間非常勤職員の効率的配置により業務処理を行うこととし、国と同様の賃金職員制度を設けなかった。
したがって、国立病院機構は、かつての国の賃金職員で退職した者を同様の処遇で再雇用することは行っていないが、
(1)看護師については、本人の希望に応じて病棟勤務の常勤職員又は外来勤務の短時間非常勤職員として新たに採用、
(2)その他の職種については、本人が希望した場合には短時間非常勤職員として新たに採用、
(3)いずれの職種であっても他の事業者への就職あっせんを希望した場合には、他の事業者等への就職をあっせんするなど、雇用に十分配慮した措置を講じたものである。
なお、全医労は、あたかも賃金職員は定員内の常勤職員として採用されることが予定されていたかのように報告しているが、賃金職員から定員内の常勤職員として任用された者はいるが、これらの者は、総定員法に定められた国立病院・療養所の枠に空きが生じた場合には直ちに賃金職員から定員内の常勤職員に採用されたというわけではなく、あくまで国の予算・定員において増員が認められた場合、その増員が認められた枠の範囲内で選考の上、任用されたものである。

3.質問IIIについて
2005年3月31日現在、労働基準監督署の数は337署及び4支署、労働基準監督官の数は3702人となっている。
労働基準監督官がその権限に基づいて行った臨検監督において労働基準法第4条(男女同一賃金の原則)に関する違反が認められた場合には是正勧告を行い、法違反を是正させている。また、重大・悪質な事案に対しては司法警察員として犯罪捜査を行い、送致している。2005年5月31日現在、地方運輸局等は11カ所、運輸支局は33カ所及び事務所は18カ所あり、これらへ154名の船員労務官が配置されている。

4.質問IVについて
【報告】労働基準法第4条関係の判例としては、次のものがあげられる。なお、判決本文は別添12を参照されたい。

(1)兼松損害賠償等請求事件
(東京地裁2003年11月5日判決 原告(労働者)敗訴、控訴係争中)
【事案の概要】
同期の一般職の男性社員との間に賃金格差があるのは、違法な男女差別によるものであるとして、原告らが被告に対し、一般職の男性社員に適用されている一般職標準本俸表の適用を受ける地位にあることの確認及びこれが適用された場合の原告らと同年齢の一般職の標準本俸等と原告らが現に受領した本俸等との差額等を求めたもの。
被告のコース別雇用管理制度は、男女をコース別に採用し、男性社員については主に処理の困難度の高い業務を担当させ、勤務地も限定しないものとし、他方、女性社員については、主に処理の困難度の低い業務に従事させ、勤務地を限定することとしたものと認められる。その結果、賃金についても、その決定、内容が男女のコース別に行われていたもので、それに伴い賃金格差も生じていた。
このような採用、処遇の仕方は、憲法14条の趣旨に反するものであり、その差別が不合理なものであって公序に反する場合には、民法90条により、違法、無効となる。しかし、当該行為は、労基法3条及び4条に違反するとはいえない。
また、原告らの入社当時、昭和60年に制定された旧均等法のような法律もなかったこと、企業には労働者の採用について広範な採用の自由があることからすれば、募集、採用について男女に均等な機会を与えなかったことが直ちに不合理であるとはいえず、公序に反するとまではいえない。
企業は採用後の従業員の処遇についても広範な労務管理権を有しているから、従業員に区分を設け、その区分に応じた処遇を行うことができると解されるが、少なくとも改正均等法が施行された平成11年4月以降において、このように男女をコース別に採用、処遇することは、均等法に違反すると同時に、公序に反するものとして違法であることは明らかである。しかし、原告らの入社当時において、不合理な差別として、公序に反するとまでいうことはできない。
改正均等法が施行されるまでの処遇により、事務職と一般職とでは、その担当した業務により、積まれた知識、経験に差が生じたことは否定できないから、労働者の配置、昇進等について、均等法6条との関係上、この差を解消する方法として事務職から一般職への転換を認める転換制度の内容が合理的であってはじめて、被告の人事制度が違法ではなくなると解するのが相当である。
被告が平成9年4月から導入した新転換制度では、従来の転換制度で必要とされていた「本部長の推薦」が不要となった結果、専ら本人の希望と一定の資格要件を満たせば職掌転換試験が受けられるものとなり、その内容も合理的である。原告らは、男性は資格・能力を問わず一般職になっているのに対し、事務職である女性のみに資格要件の具備を求めるのは不当と主張するが、職掌がありそれに伴い積む知識・経験が異なった者についてその転換をする以上、一定の資格要件の具備を求めるのはやむを得ない。
よって、新転換制度は職掌間の転換を可能とする合理的な制度であり、被告における一般職と事務職との賃金格差が違法であるとする原告らの主張は理由がない。

(2)内山工業損害賠償請求事件
(広島高裁岡山支部2004年10月28日判決 原告(労働者)勝訴、上告係争中)
【事案の概要】
原告らが、女性であったことを理由に、勤続年数、年齢を同じくする男子従業員に比較して、賃金等の支給につき不合理な差別を受けたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、被告に対し、差別がなかったとすれば支給されたはずの賃金等と現実に支給された賃金等との差額相当損害金の支払いを求めたもの。
被告は、同社における男女の職務は二区分されており、男性従業員には機械に対する高度の技能や知識が要求され、重量物や危険有害業務を取り扱うことから、男性従業員には賃金表のI表を、女性従業員にはII表を適用していた。その上で原告と比較対照の男性と比べれば、男女の職務の内容は異なっており、責任の度合、危険性の度合、身体的負荷の度合、拘束度において男女の職務には差異があり、男女の職務は相違しているのであるから、それに見合って男女間に賃金差があるのは当然であると主張する。
しかし、原告らが多く就労していた業務は、重量物を運搬するための肉体的な力は必要としなくても、高い集中力・緊張度を必要とする高価値の労働であると評価することができるのであって、被告における男性従業員と女性従業員との賃金の格差は、作業内容によって区別されたものであるといい難く、被告においては、職務や職種によってではなく、男性か女性かによって、適用される賃金表が異なっているものと認められる。そして、被告の賃金の決定要素は、性差と年齢と勤続年数の3つであり、職務・職種によって決められたものとは認められない。また、採用基準や手続は、初任給の額を除いて男女同一であり、肉体的能力、技術力、経験といった要素は考慮されることもなく採用されており、女性であるから軽度・単純・安全な職務に従事することが条件であると明示されたことはなく、採用そのものの方式や手続、職務の指定についての男女の差異はない。
結局のところ、被告における男女間の賃金格差は、性差のみを理由として区別されたものであると推認され、何ら合理性のない差別である。
以上の認定によれば、被告は、女性であることのみを理由として男女間に格差のある賃金表を定め、これを是正することなく継続してきたものであるから、労働基準法4条に照らし違法であり、原告らには、被告の不法行為により、勤続年数、年齢において同等の男性従業員との賃金等の差額相当の財産的損害が生じたものと認めるのが相当である。

(3)岡谷鋼機損害賠償等請求事件
(名古屋高裁2004年12月22日判決 原告(労働者)一部勝訴、上告係争中)
【事案の概要】
女性従業員である原告が、年齢を標準とした原告らと比較すべき男性従業員は総合職に配置され職能資格又は役割等級が付与されたのに、原告が事務職に配置され担当職1級という職能資格しか付与されていないこと、原告らと比較すべき男性従業員との間に賃金格差等があることは、被告による違法な男女差別に基づくものであるとして、総合職でのあるべき資格へ昇格したものとして取り扱われる地位にあるとの確認と差額賃金等の支払を求めたもの。
被告は、男女の就労実態の差異を前提にその差異が専ら性差に基づくものであるとして、男女をコース別に採用し、男性従業員については、主として処理の困難度の高い業務を担当させ、勤務地も限定しないものとし、他方、女性従業員については、主として処理の困難度の低い業務に従事させ、勤務地を限定した。そして、入社後の昇格・賃金についても、その決定方法、内容が男女のコース別に行われていたもので、それに伴い、昇格時期、昇格内容及びこれに伴って賃金にも格差が生じていたということができる。
このような採用、処遇の仕方は、憲法14条の趣旨に反するものであり、その差別が不合理なものであって公序に反する場合には、民法90条により、違法、無効となる。しかし、当該行為は、労基法3条及び4条に違反するとはいえない。
原告らが入社した当時は、女性従業員の勤続年数は短く、一般的に企業が女性について全国転勤や海外赴任を行うとは考え難く、企業においても効率的な労務管理のための男女のコース別の採用、処遇が、当時においては不合理な差別として公序に反するとまでいうことはできない。
その後、平成11年に施行された改正均等法においては、男女の差別的取扱いの禁止は使用者の法的義務であるから、この施行時点以降において、被告がそれ以前に入社した従業員について、男女のコース別処遇を維持することは、均等法6条に違反し、公序に反して違法である。なお、被告は昭和63年に職掌別人事制度の導入と併せて、女性従業員が属する事務職から男性従業員の大半が属する総合職への職掌変更制度を設けたが、上長の推薦を申請要件とするなどにより、十分に機能していない不合理なものと認められることから、職掌変更制度の存在により、配置における男女の違いが正当化されるとすることはできない。
あるべき資格への昇格については、昇格決定についての使用者の総合的裁量的判断は尊重されるべきであるから、昇格決定のない段階で「あるべき昇格」を認めるのは困難であり、また、原告入社当時の男女のコース別採用、処遇が公序に反するものとまではいえず、担当職務の違い等により、男性従業員と女性従業員の間で入社後に積まれた知識、経験に差があったと考えられることから、直ちに男性従業員と同様の昇格をさせるべきであったということはできない。また、原告が当然総合職に配置され昇格したものとして、同標準年齢の男性従業員との差額賃金の請求権を有しているとは認められない。
しかし、改正均等法施行後、被告が均等法により禁止されているにもかかわらず、それまでの男女のコース別処遇を維持したことについては、違法な男女差別という不法行為が成立し、被告は原告が被った損害を賠償すべき義務を負う。

(4)名糖健康保険組合(男女差別)事件
(東京地裁2004年12月27日判決 原告(労働者)一部勝訴、確定)
【事案の概要】
原告らが、女性であることのみを理由に、賃金、昇格において差別されたと主張し、各労働契約に基づき各入社時から平成15年9月までの間の差額賃金と、不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに、差別がなければ昇進・昇格したはずの地位の確認を求めたもの。
原告らより年齢が若く勤続年数も短い男性職員Aの採用時の基本給等が原告らの当時の基本給等を上回り、その後も原告らより高い水準で推移していた。労働者としての資質・能力や従事した職務の質及び量において、また勤務成績において、原告らがAに劣るということは考えられず、むしろ、業務の習熟度からは、少なくともAの採用当初では、同じ業務に長く従事していた原告らが遙かに勝っていたと推認されることから、Aと原告らの給与水準の違いについて合理的に説明できる事情は証拠上見出し難く、結局は、原告らが女性であるがために、それまでの基本給等が低く押さえられ、その後も同じ状態が続いた結果であるとみるほかはなく、これは労基法4条に明らかに違反するものである。
しかし、被告において勤務期間が一定年数に達したからといって、当然に一定の役職に昇進するという労使慣行はなく、被告の昇進発令がない本件においては、次長の職位にあることの確認を求める原告の請求は失当である。
また、客観的な給与決定基準が存在せず、直接比較対照すべき男性職員が存在しない本件においては、原告等の賃金額を一義的に決定すべき法的根拠が見出しがたく、原告らのあるべき賃金額が客観的に決定されることを前提とした差額賃金請求権は前提を欠き失当である。
一方、被告は労働基準法4条に違反し、原告らが女性であることを理由に差別的取扱いをしてきたものであり、遅くとも原告らより高額の初任給でAを採用した時期以降は、それと認識しつつ男女差別の違法行為を続けていたと認めることができるから、同時期以降、被告の違法行為について不法行為が成立し、それに基づく損害賠償請求権が認められる。

(5)住友金属損害賠償等請求事件
(大阪地裁2005年3月28日判決 原告(労働者)一部勝訴、控訴係争中)
【事案の概要】
被告の事務技術職掌に属する従業員又は元従業員である原告らが、被告から、女性であることを理由として昇格及び昇給において差別的取扱いを受けたとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、本件差別的取扱いがなかった場合の得べかりし賃金(退職金を含む。)との差額相当の損害及び精神的損害の賠償等を求めたもの。
被告の高卒事務職の男女間においては、昇進・昇級及び賃金に関する格差の程度は顕著であるといえる。この格差に合理的な理由が認められない限り、性別による差別的取扱いが推認される。
被告は、本件格差は「本社採用者」と「事業所採用者」のコース別取扱いにより生じた旨主張する。被告においては、能力評価に基づき、昇進・昇級を行う建前になっている。被告における能力評価の要素である技能度(熟練の程度・仕事の実績・仕事の応用力)、勤怠(勤務状況)、人的特性(積極性・協同性)は、いずれも現に担当している職務について評定することとされているのであるから、被告が本件コース別取扱いに基づき高卒男性事務職をより基幹的な業務に、高卒女性事務職を補助的・定型的業務に配置したからといって、その職務内容の違いが直ちに評価の差異となって表れるとはいい難い。
被告においては職務評価を行うに当たって、前述の技能度、勤怠、人的特性を評価要素とする「能力評価区分」と、給与係数に対応した「評価区分」の2つを用いていた。「評価区分」においては高卒男女の間で給与係数に差異を設け、高卒男子により高い係数を設定した。また、高卒女性事務職に関しては、仮に高位の能力評価区分を受けても、原則として評価区分は低位にとどめる一方、高卒男性事務職に関しては、仮に能力評価区分で最下位の区分に位置付けられても、評価区分はある程度以上の区分に位置付ける運用を行った。能力評価の結果、高卒男性事務職と高卒女性事務職の年収に大きな差異が生じることとなった。これは、男女間の評価において明らかに差別的取扱いをし、それに基づき昇給・昇進等の運用をしていたというべきである。
高卒事務職の募集・採用時に男女間においてコース別取扱いをすることは、その当時において直ちに公序良俗に違反しないとしても、採用後の高卒事務職の男女間の差別的取扱いが、募集・採用時におけるコース別取扱いの差異に基づくものとは認められないか、又はその差異に基づくものであったとしても合理性を有しない場合には、なお公序に反して違法というべきである。
本件コース別取扱いに基づき、高卒男性事務職については、高卒女性事務職よりも有利な取扱いをしていたのに対し、高卒女性事務職に対しては、基本的には補助的な業務に就かせていたことは、未だ公序良俗に違反するとはいえない。
しかし、本件格差は、被告が同等の力を有する高卒事務職であっても、男女間で能力評価において差別的取扱いをし、同じ能力評価区分に該当した者についても評価区分等において明らかに差別的取扱いをし、昇給・昇進等の運用をしていたことによるもので、コース別取扱いと合理的関連を有するとは認めがたく、被告の本件差別的取扱いは、性別のみによる不合理な差別的取扱いとして民法90条の公序に反する違法なものであり、被告は不法行為責任(民法709条、44条、715条)に基づき、原告らに生じた損害を賠償する義務を負う。

5.質問Vについて
前回までの報告を以下のとおりに改める。
船員労務官による事業場及び船舶監査(2003年8,430件、2004年8,208件)において、男女同一賃金の原則に係る違反件数は0件である。

6.質問VIについて
本報告の写を送付した代表的労使団体は、下記のとおり。
(使用者団体)日本経済団体連合会
(労働者団体)日本労働組合総連合会

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